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大太鼓/バスドラム/ベースドラム/コンサートバスドラム

単体で使う大きなものと、ドラムセットに組み込んで使うペダルで鳴らすものがある。

単体で使う大きなものはコンサートバスドラム、ドラムセットに使うものは「kick drumキックドラム」「B.D.(kick)」などと表記すると間違われにくい。

Bass drum/B.D.

bass drum【英】
grosse trommel【独】
grosse caisse, gros tambour【仏】
cassa, gran cassa, gran tamburo【伊】

円筒形の両面太鼓で、どうの直径は深さよりも大きい。目的により大きさも異なり、14インチ×28インチ(36㎝×71㎝)~18インチ×40インチ(46㎝×102㎝)ぐらいまである。オーケストラおよび吹奏楽用としては、16インチ×34インチ(41㎝×86㎝)~18インチ×36インチ(46㎝×91㎝)ぐらいまで、行進用としては、小型のものか、スコッチ・ベース・ドラムなどが適している。ヘッド(膜面)はドラム・ロッドによって両面別々に調整できる(小型のものには、片面だけで締めるものもある)。また、古い様式のものには、紐締めのものもある。現代では、どうは合板のものが多いが、金属のものもある。はっきりした音程はない。演奏のさいには、ヘッドをを側面にして、スタンドの上にのせる。回転式のスタンドの場合にはすこし傾斜させる。そのほか胴が直接スタンドに密着せずに、枠式のスタンドによって同を吊るす方法もある。ばちはふつうの演奏の場合には、大きな頭のやわらかいばちを用い、ロール演奏には、専用のロール用ばちを用いる。また、作曲者の要求によっては、木のばちや、ワイヤー・ブラッシュなども用いることがある。

ジャズに用いるいわゆるドラムセット用の大太鼓は、サイズが小さく、14インチ×20インチ(36㎝×51㎝)ぐらいが一般的である。これは足によるペダルの操作によって打たれ、ペダルに取り付けられたばちの頭も硬い。多くの場合ヘッドは、フェルトまたは布で常にミュート(弱音)され、音はにぶくて、単調である。なお、現代ではペダル演奏は、ジャズに限らず、室内楽やオーケストラなどにも用いられることがある。コントラベース・ドラムcontrabass drumという楽器名を使う作曲者もあるが、これも大太鼓のことで、この場合は40インチ(102㎝)ぐらいの太鼓を用いればよいだろう。

【歴史】
大太鼓を歴史的に考える場合、たんに大きな太鼓と解すればその起源はまことに古い。シュメールの王城址から出土したレリーフ(浮彫)の破片には、人の高さと同じぐらいの太鼓を、手で打っているところが刻まれている。これはグデアgudea朝のものとされ、紀元前2500年ぐらいのものと推定されている。この太鼓には、鼓面の周辺に均等に皮を張るためのものと思われる、鋲(びょう)または くさび のようなものがはっきりとみえる。この写真はルーブル美術館で撮影したものだが、「礼拝の情景」と説明書きのあるところをみると、この大太鼓は何か宗教的な行事に用いられていたものと考えられる。楽器としての大太鼓は18世紀のはじめごろまで、ヨーロッパではあまり知られていなかった。1700年ごろ、トルコの軍事力を制圧したヨーロッパ軍は、トルコの軍楽隊(ジャニサリー音楽Janissary music)を模倣して軍楽隊をつくり、このジャニサリー音楽が全ヨーロッパにひろがった。この時代に使われていた大太鼓は、ダブル・トゥルキーtabl turki【アラビア語】といい、胴の直径より深さの方が長く、右手に大太鼓のばちを、左手に むち のような棒(swichーかばの木の枝でつくったしなやかな棒)をもって、太鼓の両面を打つ奏法が用いられていた。この太鼓のことをターキッシュ・ドラムあるいはロング・ドラムーTurkish drum, long drum【英】Langtrommel【独】atabal turques【西】ーともよんだ。ターキッシュ・ドラムの奏法は、ハイドン、モーツァルトの作品にも影響をおよぼした。この胴の長い大太鼓は、個太鼓の改良と普及にともなって、だんだん胴の深さよりも直径の方が大きくなって、今日の大太鼓となった。なお、日本では大太鼓のことを、通称バス・ドラムといっているが、これはベース・ドラムの日本語化されたものである。

【網代景介・岡田知之共著「新版 打楽器事典」1981年】

主なメーカー

YAMAHA(ヤマハ)
Pearl(パール)
Lefima(レフィーマ)
Ludwig(ラディック)

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