こんにちは!打楽器の吉岡です!
今回は2021年度吹奏楽コンクール課題曲III「僕らのインベンション」について演奏のポイントをまとめていきます。
具体的な奏法よりも楽譜の読み取り方に重点を置いて書いていきます!
もくじ
曲全体
場面ごとに音楽の雰囲気やノリがめまぐるしく変化し、打楽器の持つ多彩なキャラクターが随所で生かされている作品です。
カメレオンのように、打楽器の音色もノリも鮮やかに変化させたいですね!
打楽器と管楽器が分離した演奏にならないように、打楽器も「息」を使って鳴らすイメージを持って演奏していきましょう!
スペイン風のオーケストラ作品を聴いてみると、独特な雰囲気やリズムのノリをつかめると思います。
- リムスキー=コルサコフ作曲「スペイン奇想曲」
- ラヴェル作曲「スペイン狂詩曲」
- チャイコフスキー作曲「くるみ割り人形よりスペインの踊り」
など
ティンパニ
オーケストラではティンパニが「第2の指揮者」と言われるほど、強い支配力を持っています。
そのため、ハーモニーの移り変わりにハッキリした輪郭を与えたり、頂点となる瞬間へバンド全員を引き連れていくなど、とても重要な役割をもっています。
引き締め役としての自覚を持って、堂々とした音で演奏していきましょう!
また場面によって、
「打楽器らしい引き締まった音」
「バンド全体を支えるような奥行きのある音」
など、様々な音色が求められると思います。
ロールだからソフトマレット、スタッカートついてるからハード、と通り一辺倒な決め方ではなく、最適なマレット選びにもこだわっていきましょう!
(もちろん、マレット変えずに音色を変えていくのも大切です)
21~
チューバなど低音パートの一部分だけを抜き出して演奏しています。
低音のパートを歌いながら自分のパートをたたくと、よく馴染んで低音パートをしっかり支えることができます!
ティンパニは出せる音が限られているので、このような部分が何度も出てきます。
自分のパートだけでなく、低音パートの動きを把握して一体感を持って演奏していきましょう!
ティンパニは音程の有る楽器なので、たたいた後にそのままにしておくと合奏のハーモニーを濁らせてしまいます。
休符があるときは可能な限り音を止めましょう。
(マフリングといいます)
休符も演奏するようなイメージで、止めるタイミングも拍に合わせると音楽的な演奏になります。
ノリが悪い、テンポが良くない原因は「休符」にあった!?~休符も歌おう!
95~
スタッカートが付いています。
管楽器奏者がどのような息遣いで、コントラバス奏者がどのような弓使いでスタッカートを弾いているかよく観察して、ティンパニでも表現してみましょう!
ロール=「連打」ではなく、「音を伸ばす」ことも忘れずに!
楽器は違えどロールの基本は同じ!
56~
音替えで少しバタバタするかもしれませんが、しっかり音程をとっていきましょう!
低音のパートは八分音符でずっと動いているので、その動きに乗って2拍目の裏をたたいていきます。
ただパート譜の音符だけを演奏するのではなく、低音パートを歌いながら練習するとタイミングも音色も合うようになってきます。
149~
クレッシェンドを素敵に聴かせるには、同じくロールしているスネア&シンバルと音を大きくし始める「タイミング」と「大きくする幅」をそろえます。
149小節目でDes、153小節目でDが出てきますが、この2音を同じティンパニで音変えして取る方法と、違うティンパニでとる方法が考えられます。
153小節めからはほとんどの楽器がDユニゾンで動いているので、ティンパニの音程がズレていると目立つポイントです。
153小節め頭で正確に音程が取れるのなら、同じティンパニで音程を変える方法が使えます。
違うティンパニでとる場合は、144小節で使ったDをそのまま残しておいて、Desを別のティンパニで用意します。
ただし、この場合Desの音が153小節に残るので、マフリングの必要があるかもしれません。
状況に合わせて最適な方法を選んでみてください。
曲全体にわたってくの字型アクセント、縦型アクセント、スフォルツァンドなど細かく指定されています。
アクセントは単純に「強く」たたくだけではない上に、同じ記号でも場面によって求められる音が変わってくるはずです。
管楽器の息遣いや弦楽器の弓使いを観察したり、たたき方を工夫して一打一打にこだわって演奏していきましょう!
Perc.1
2小節~
フルートと同じ動きをしています。
音を出すスピード感や深さのコントロールして、スタッカートやテヌートなどのアーティキュレーションをフルートと一緒に表現していきましょう!
使うマレットにもこだわっていきましょう!
またアクセントは単に「強く」ではなく、「濃く」「深く」とも考えることができます。
自分が普段の会話で話すときに軽くアクセントをつけるようなイメージを持ってみてもいいかもしれません。
打楽器でスラーはつけられるのか!?
20小節~
グロッケン(またはチャイム)は2拍目から入っていますが、頬化の同じ動きをしている人たちはその前からスラーで十六分音符を演奏しています。
管楽器のフレーズに途中から合流する形ですね。
スムーズに合流できるように、フレーズを大きく感じて演奏していきましょう!
77小節~
本当に大事なポイントにしかシロフォンは入っていません。
何故この瞬間にシロフォンが入っているのか…?
どんなタッチの音がふさわしいか?
ヒントは一緒に吹いている楽器の音域や、ついているアーティキュレーション、音楽の区切りです。
是非こだわって音を出してみてください。
ダブルスラッシュの正体は・・・!?
ダブルスラッシュではなく〇〇〇ー〇!?楽譜のコンマ「 ’」「 // 」どう演奏すればいいのか?
104小節~
低音楽器は「ミ、ド、ラ、レ、ソ」と下降しています。
バスドラムもひとつひとつの音に音程があるイメージでたたいていきましょう!
それから、合わせシンバルとバスドラムは切っても切れない関係です。
シンバルの華やかさをバスドラムの低音で支えていきましょう!
基本的に音量はシンバル<バスドラムだとブレンドしやすいです。
126小節~
106小節から続いてきた緊張感が一気に解放される瞬間が126小節目です。
それまでカチッとした3拍子で進んでいた音楽が、126からベースラインが2拍子に変わり、開放的な音楽に変化します。
「満を持して」カスタネットが入ってきます!
バンド全体のノリを支配する勢いで演奏していきましょう!
(3連符は八分音符へ向かう装飾なので、軽く!)
管楽器のスラーを見ると分かりますが、基本的に3連符から八分音符へのフレージングで演奏していきましょう!
ラスト
トドメのバスドラム!
ユニゾン、同音の連続で進む音に最後バスドラムが入ることによって、お客さんは直感的に曲の終わりを感じます。
直後に入ってくる合わせシンバルとの「勢い」も合わせて、エキサイティングかつ従属感のあるラストを飾りたいですね…!
Perc.2
21小節~
21小節目から始まるスペイン風の音楽を引っ張っていく大切な役割です。
バンド全体を引っ張っていく、リズム面で支えられるような安定感が必要です。
カスタネットとの意気投合も大切ですが、25小節目からはホルンと、33小節目からはアルトサックスと一緒に演奏していきましょう!
タンバリンで細かいリズムをたたく場合、以下のやり方が考えられます。
- 片手で指を駆使してたたく
- ヒザにおいて両手でたたく
- スタンドに固定して両手でたたく
もちろん、可能であれば片手のシングルストローク(通常のたたき方)で演奏できれば、表現が一番付けやすいです。
歯切れよく、存在感のある音が出せる方法を見つけてみてください。
タンバリンをカッコよくたたく!
「音のキレ」のヒントになるかも…?
39小節~
たかがタンバリン、されどタンバリン!
音色を自在に変化させて、アクセントはカッコよく聴かせていきましょう…!
タンバリンでスフォルツァンド!山型アクセント!たたき方2種類×2種類
62小節~
常に管楽器のハーモニーに参加するつもりで演奏していきましょう!
シンバルとしての存在感を保ちつつ、管楽器と馴染む明るい音色がいいですね。
どうしたらブレンドする?
打楽器うるさい問題、弱くたたくだけでは解決しない!?~管楽器とブレンドする方法
84小節~
直前の音楽をよく聴いて流れに乗って演奏すると、唐突な感じが無くなると思います。
100小節~
95小節目からスタッカートで小さめの音量で緊張感のある音楽が進んでいきます。
それが101小節目からは音を伸ばすパート、キメるパート、スラーで駆け降りるパート、と様々な動きが現れ、広がりのある場面へ突入します。
ここのサスペンデッドシンバルは短いクレッシェンド+ロールですが、音楽が大きく移り変わる大事な瞬間に入っています。
サスペンデッドシンバルのクレッシェンドは音楽を盛り上げると共に、次の場面へ繋げる役割を持っています。
クレッシェンドの終わりの音(目的地)がどんな音楽になっているか?
どんなハーモニーが鳴っているか?
意識して演奏していきましょう!
バンドのみんなを新しい場面へ連れて行くように、印象的に演奏したいですね。
104小節~
低音楽器は「ミ、ド、ラ、レ、ソ」と下降しています。
シンバルもひとつひとつの音に音程があるイメージでたたいていきましょう!
それから、合わせシンバルとバスドラムは切っても切れない関係です。
バスドラムの低音に乗っかるイメージで演奏していきましょう!
基本的に音量はシンバル<バスドラムだとブレンドしやすいです。
106小節~
管楽器のフレーズ頭や終わりに合わせシンバルが入っています。
細かい動きをしている木管楽器を潰さないように気をつけつつ、華やかさを添えていきましょう!
130小節~
カスタネット、スネアが作り上げたノリに乗っかって演奏していきましょう!
この部分のパーカッションは細かいリズムと音量が相まって ごちゃごちゃした印象になりやすいので、同じリズムの人たちでノリを揃えたり、歯切れのよい音で演奏するようにしていきましょう!
(3連符は八分音符へ向かう装飾なので、軽く!)
管楽器のスラーを見ると分かりますが、基本的に3連符から八分音符へのフレージングで演奏していきましょう!
ラスト
最後はなんとシンバルのソロ!
何となく演奏していると、「半拍遅れて入っちゃったのかな?」「変な曲だな」と思われる可能性が高いです…!
シンバルが入る直前まで、ユニゾン&同音反復タンギング祭りで進むスピード感あふれる音楽が展開されています。
意思の有るキレッキレの音で、エキサイティングかつ従属感のあるラストを飾りましょう!
合わせシンバル、いい音で鳴らすには?
合わせシンバル(クラッシュシンバル)をイイ音で鳴らすための基本3つ
Perc.3
スティック選び方
四分音符は四分音符だけど…?
21小節~
イントロが終わり、新しく始まるスペイン風の音楽を引っ張っていく大切な役割です。
バンド全体を引っ張っていく、リズム面で支えられるような安定感が必要です。
25小節目の頭までたたくイメージで演奏する&25小節め頭から入るホルンにバトンタッチする感覚を持って演奏すると、スッキリ聞こえると思います。
タンバリンと一体感を持って演奏していきましょう!
59小節~
休符の間も他のパートを歌いながら自分のパートを演奏すると、よく馴染んで一体感が生まれます。
ティンパニと一緒にフォルテピアノをカッコよくキメていきましょう!
73小節~
ウッドブロックも管楽器のハーモニーに参加するイメージで演奏していきましょう!
ゴムマレットや綿巻きマレットなど、楽器によって相性のいいマレットは変わってきます。
できれば離れた位置から聞いてもらって、ベストなマレットを選んでいきましょう!
95小節~
95小節目からスタッカート&小さめの音量で緊張感のある音楽が進んでいきます。
それが101小節目からは音を伸ばすパート、キメるパート、スラーで駆け降りるパート、と様々な動きが現れ、広がりのある場面へ突入します。
音色のメリハリをつけて演奏していきましょう!
126小節~
106小節から続いてきた緊張感が一気に解放される瞬間が126小節目です。
それまでカチッとした3拍子で進んでいた音楽が、126からベースラインが2拍子に変わり、開放的な音楽に変化します。
126小節目めは新しい気持ちで入りましょう!
(3連符は八分音符へ向かう装飾なので、軽く!)
管楽器のスラーを見ると分かりますが、基本的に3連符から八分音符へのフレージングで演奏していきましょう!
147小節~
引き締め役ではありますが、スネアでも音符一つ一つに音程があるイメージで最後まで演奏していきましょう!
終わりに
以上、2021年度課題曲III「僕らのインベンション」の打楽器演奏のポイントでした!
スコアを読み込むことで、
「どう演奏したらいいか?」
「この音にはどんな役割があるのか?」
知ることができます。
スコアや楽譜の読み解き方はこちらの記事を参考にしてみてください。
打楽器の出番少ない!つまらない!いやスコアを読めばきっと面白くなる!
また、「打楽器の音が大きすぎる!小さくしろ!」「管楽器と混ざらない!」問題については以下の記事を参考にしてみてください。
打楽器うるさい問題、弱くたたくだけでは解決しない!?~管楽器とブレンドする方法
それでは、また!