学生時代化から大変お世話になっているピアニスト、奈良原弘美さんから委嘱いただいたピアノ曲「目覚める石」が初演されます。
【終了いたしました。ありがとうございました!】
【川越公演】
10月8日(金)
19:00開演 18:30開場
ウェスタ川越 小ホール
【小平公演】
10月29日(金)
14:00開演 13:30開場
ルネこだいら中ホール
【池袋公演】
12月10日(金)
19:00開演 18:30開場
としま区民センター 小ホール
演奏動画が公開されました!
「目覚める石」プログラムノート
目覚める石
I.夜明け前 II.目覚め
ガムランの演奏と舞踊を学ぶためインドネシアに3週間ほど滞在した際、ボロブドゥール遺跡へ行く機会に恵まれた。遺跡は雄大な山々に囲まれた平原の中央に立地する、石造りの階段状ピラミッドである。広さはテニスコート57面分、高さは11階建てのビルに相当する。
本当に日は昇るのだろうか?と疑うほど真っ暗な中、遺跡に到着した。
観光地とは言え、遺跡には照明が無い。小さな懐中電灯で足元を照らしつつ石畳の階段をひたすら登った。
数メートル先も見えない暗闇の中、無心で日の出を待ち続けた。
次第に闇が薄くなっていく。空が少しずつ明るくなるにつれ、自分が立っている場所の高さを知って驚いた。遺跡の外には鬱蒼とした森が広がっていることを知った。今まで闇に包まれていた遺跡の形や色、全てが見えるようになった。黙っているはずの石が、光の中で躍動していた。自分の存在を忘れるほど見入った。そこには多くのレリーフや彫刻が、見えていなかっただけでずっと存在していた。至極当たり前のことなのだが、その時はとても不思議に感じられた。
ボロブドゥールは、曼荼羅を立体化したような構造である。
高くなっている中央部は悟りの境地を表しており、幾何学的な模様のみが彫られている。対して低くなっている周りの部分は欲にとらわれた人間界を表現しており、衆生の日常や植物文様および伝説上の生き物など多種多様なレリーフがみられる。喜びあり悲しみあり、踊りあり音楽あり、ありのままの「生」がダイナミックかつ繊細に描かれている。
頂上で日の出を待つ「I.夜明け前」、 降り注ぐ陽の中で躍動するレリーフを「II.目覚め」として、インドネシアの伝統音楽ガムランの旋法や音型を引用しつつ、当時受けた鮮烈な印象を五線譜に書き起こした。遺跡で感じた光と空気を少しでも共有できれば幸いである。