こんにちは!
打楽器奏者としての経験を生かしつつ中学校の部活動指導員やっています、吉岡です。
企業経営の考え方でトップダウン型とボトムアップ型という言葉があります。
以前、月刊教職研究に掲載いただいた際にも少し触れた内容なのですが、改めて吹奏楽部には「ボトムアップ型」が向いている!と感じたので、書いていきます。
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トップダウンとは
トップダウン型"]企業経営などで、組織の上層部(トップ)が意思決定をし、下部組織に指示を出し実行させる管理方式。
部活動に置き換えてみると、トップダウン型は顧問の先生や指揮者、幹部部員が意思決定し、部員たちが従っていくやり方になるかと思います。
一般的なやり方だと思います。
トップの手腕次第で短期的に成果が出る方法ですが、幹部部員の引退、顧問の先生や指揮者が変わってしまうとすぐに崩れてしまうやり方です。
吹奏楽コンクールで去年まで上位大会へ進出していたのに顧問の先生が異動したら、いきなり地区大会どまりになってしまった。
演奏メンバーは去年と半数以上同じなのに、何故!?
といった現象は、トップダウン型の特長だと思います。
ボトムアップとは
ボトムアップ型"]企業経営などで、組織の下部からの意見を吸い上げて全体をまとめていく管理方式。
ボトムアップ型では部員一人一人が考え意見を出し合い、顧問の先生や指揮者、幹部部員は意見を整理したり調整し全体の意思決定をする役割を持ちます。
トップダウン型に比べてスピード感は劣りますが、活動全体をすすめるために部員一人一人が考えることで様々なアイデアが出てきます。
学年関係なく出てきたアイデアを活動全体に反映させることで、自ら考え動く自主性を育てるとともに、一人一人が部活を動かしている実感を感じられるようになります。
吹奏楽部における3つの理由
企業経営の場合トップダウン式もボトムアップ式もメリットがあります。
しかし、部活動の場合は事情が異なります。
吹奏楽部にボトムアップ式が適している3つの理由を書いていきます。
1.毎年メンバーが入れ替わる
企業や一般楽団と異なり、部活動は毎年メンバーが入れ替わります。
顧問の先生や指揮者も数年で入れ替わります。
企業とは異なり、部員たちは1年ごとに自動的に昇進していきます。
トップダウン式の場合、トップが変わると大きく変動してしまいます。
トップ次第で活動のクオリティが大きく変わってしまうと、部員はどう感じるでしょう?
良くなったとしても悪くなったとしても、
といった、他人任せででネガティブな思考に入ってしまいそうです。
先輩後輩でも同じことがいえると思います。
先輩の言うことを聞いていただけの1年2年を過ごしたあと、3年生が引退したらいきなり指示を出したり意思決定をする立場になる。
極端な例を言えば、指示待ち人間がいきなり指示出し人間にならないといけなくなるわけです。
活動全体として見ても、各自の気持ちも考えても、スムーズとは言えません。
1年生のうちから積極的に意見を持ち、周りもそれを聞き入れる雰囲気を持つことで、いざ先輩になっても自分の意見を持ったうえで指示を出したり、相手の意見を聴くことができるようになります。
1年生(ボトム)のうちから部活の一員として意見を出してもらい全体へ積極的に取り入れていく(アップ)、ボトムアップ型が生きてくると思います。
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2.教育の一環であること
企業=吹奏楽部、利益=コンクールの結果 と置き換えて考えてみます。
企業の場合、利益を出すと共に従業員を育てる必要があります。
利益が出せなければ事業は立ち行かず、倒産してしまいます。
吹奏楽部の場合、部員ひとりひとりを伸ばすことに集中できます。
コンクールの結果は大切かもしれませんが、それで部活が潰れたり生活に困ることはありません。
トップダウン型がいきすぎると、部員はとにかく出された指示に従う受動的な姿勢になってしまいます。
ボトムアップ式なら、ひとりひとりが全体のことを考え、意見を出す習慣を作ることができます。
今日は何ができたか。
この一か月の自分はどうだったか。
この1年で自分はどれぐらい理想に近づけただろうか。
誰かに評価してもらうだけでなく、自分を客観視し、自身で考え評価することも生きていくために必要な力です。
中学高校時代の経験は後の人生に強く影響します。
自分の意見を持たず、相手(トップ)に気に入られるように行動したり忖度するのが「当たり前」になってほしくないです。
結果的に自分の意見を持たない分、自分の行動に責任を持たず、相手に何かあれば相手のせいにする人間を育てるのは教育として正しくないと思います。
3.楽器ごとの専門性
企業経営において、専門性の高い業界やサービスにトップダウン型は合わないと言われています。
吹奏楽部は発音方法や操作が異なる10種類以上の楽器を扱う特殊な部活動です。
各楽器ごとの専門性が高く、すべての楽器をまんべんなく詳しく教えられる人はほぼいません。
私の専門は打楽器です。
管楽器の「演奏」「出てきた音」に対してアレコレ言うことは出来ますが、楽器の指使いや身体の使い方までは言及できません。
結果を指摘することは出来ますが、結果に至る具体的な過程について答えることが出来ません。
そのため、勤務校では部員を「部内におけるその楽器の専門家」として扱い、「この場合、フルートだったらどう解決する?」と部員に尋ねるようにしています。
コロナ対策下の部活動再開でも、リードの扱いやマウスピースの洗浄について生徒から現場の意見をもらい、大変助かりました。
自分が担当するパートへの責任感、そして部員ひとりひとりが活動全体にかかわっている意識を持つためにも、ボトムアップ型が最適だと思います。
まとめ
吹奏楽部がボトムアップ型になると
- スムーズかつ安定した運営ができる
- ひとりひとりが自主的に動けるようになる
- 自身と全体への責任感が生まれる
もしかしたら、頭の回転が速い顧問の先生や指揮者、幹部部員にとってボトムアップ式は歯がゆい部分もあるかもしれません。
自分自身が選択したことなら、いくら失敗しても回り道をしてもいいと思います。
周りの評価よりも、各自の実感として有意義な活動に出来るかどうかが重要だと思います。
各自が有意義に感じているなら、自ずと活動全体も有意義なものになっていることと思います。
本来、部活動は生徒主体で行う活動と定義されています。
とは言え、意見を出し合うことに慣れていなかったり、先生の言うこと聞けばいいや、誰かが何とかしてくれる…といった考えを無意識に持っている、生徒主体の意識が低い場合もあるかと思います。
また次の機会に意見を出し合う方法などについて書いていきたいと思います。
それでは、また!