こんにちは!打楽器の吉岡です。
吹奏楽やオーケストラで使われるシロフォンですが、実は現在の形になったのは100年ほど前です。
それまでは縦方向に鍵盤を並べたものが主流でした。
今回は衝撃的な見た目の「シロフォンの前身」についてのお話です!
シロフォンの前身、ストローフィドル

4列で並んでいて、手前側から低音~奥に向かって高音へ並んでいます。
ピアノと同じ音程が出せますが、全く違う並び方をしていました。
共鳴管は無く、バチも現在のものと形状が異なります。
この楽器はストローフィドル(straw fiddle)と呼ばれていました。
現在でも「ストローフィドル」と言えばこの縦型の木琴を指すようです。
日本語では「縦型木琴」「はしご型木琴」として知られていたそうです。
語源
fiddle=ヴァイオリン
元々は藁の上に細長い木片をいくつか並べただけの大変シンプルな楽器だったそうです。
藁の上で共鳴管もないので、音はほぼ伸びなかったと思います。
元々は民族楽器
吹奏楽やオーケストラで使われている楽器は、ほとんどが民族楽器からスタートしています。
大きなホールで演奏するために大きな音が出せるようにするなど、操作性と安定性を向上させた楽器が現在世界中で普及しています。
ストローフィドルも中央ヨーロッパの民族楽器でした。
民族楽器の変遷についてはこちらでも触れています

木片を集めてきて削って音程を揃え、藁の上に並べて演奏する。
手作りして身近な人たちだけで楽しむ、庶民的な楽器だったようです。
いつごろできたのかは不明ですが、wooden percussionまたはwooden clatterまたはstraw fiddleとして文献に残されており、16世紀までさかのぼることができるそうです。
楽器として普及

木片を藁の上に置くスタイルから、次第に木片を吊るすスタイルになっていきます。
(まだ共鳴管はついていません。)
1830年代(19世紀)の記録によると、広く知られる楽器となり、名演奏者が登場していきます。
アクロバティックで華やかな見た目から、宮廷お抱えの奏者からサーカスで活躍するパフォーマーまでいたそうです。
こちらのサイトtemposenzatempoでは写真で当時の様子が伝わってきます。
(残念ながら日本語の資料は少ない現状です…)
ストローフィドル演奏動画
「straw fiddle xylophone」で検索すると、意外と演奏動画が見つかります!
現在の楽器とは全く違う雰囲気ですよね…!
現在の形へ

1874年(19世紀後半)に作曲家サン=サーンスが初めてクラシックオーケストラの作品にシロフォンを使います。
(交響詩「死の舞踏」で踊る骸骨の骨がぶつかる描写、数年後には「動物の謝肉祭」で化石のイメージで使われている)
そのあたりでピアノと同じ並び方が普及していき、現在の形になったようです。

シロフォンが今の形になったのは100年も前かぁ!
と思われがちですが、ピアノは300年前にほぼ形ができあがっているので、シロフォンの歴史は浅いほうです。
ストローフィドルと似ている楽器

身近なものだと鼓笛で使うベルリラが似ていますが、鍵盤の並び方はピアノと同じで、そのまま縦にして演奏しています。

鍵盤の並び方やバチで演奏するタイプの楽器として、ハンガリーを中心とする中欧・東欧の楽器ツィンバロン、イランのサントゥール、中国の揚琴、ベトナムのトルンなどが似ている楽器として挙げられます。
(ツィンバロン、サントゥール、揚琴は並べて張った弦を叩いて音を出す打弦楽器、トルンは下に低音~上へ高音と斜めに並んでいる竹琴です。)
おわりに
以上、シロフォンの前身ストローフィドルについてでした!
楽器が現在の形になっていくのは、19~20世紀における科学技術や産業の発達と大きく関連しています。
それでは、また!
