サクッと手軽に読める打楽器お役立ち情報

シロフォンとマリンバの決定的な違いは調律と歴史!

シロフォン鍵盤

こんにちは!打楽器の吉岡です。

シロフォンもマリンバも同じ木琴です。

吉岡さん(中2)

大きさとか共鳴管の長さ?音の伸び方が違うんじゃない?

実は、こんなフワッとした違いだけではなく決定的な違いがあります!

ということで、今回はシロフォンとマリンバの決定的な違い「チューニング」と「歴史」について書いていきます。

チューニングが違う

シロフォン
マリンバ

シロフォンとマリンバの決定的な違いは「チューニング(調律)」にあります。

音板は大きさだけではなく、裏側の削り方で音程が変わってきます。

(そこらへんの木の板を叩いても木琴のような音が出ないのは裏側を削っていないから)

音板の裏の削り方が違う

低音部の音板を横から見てみると分かりやすいです。

シロフォンの音板
マリンバの音板

シロフォンは波打っていますが、マリンバは中央部分がえぐれています。

削り方が違うのは、シロフォンとマリンバでチューニングする倍音が違うからです。

次の部分で説明していきます。

MEMO
木琴は一度作ったらチューニング変えられない!
と思われがちですが、メーカーさんにお願いするなどして微調整することができます。
音板を削ってピッチを高くすることはもちろん、特定の部分を削ることによってピッチを低くすることも可能です。

倍音のバランスで音色が変わる

(厳密には異なる部分が出てくるかもしれませんが、仕組みを理解するために簡略化して説明していきます。)

楽器職人
楽器職人

よし、「ド」の音板作るぞ!

まず「ド」の音が出るように削りますよね。

この「ド」がその音板の基音となります。

本来出したい音が「基音」です。

ただし、この基音だけに合わせて削ってチューニングしていくとあまり響きが良くなりません。

そこで、鍵盤打楽器は「基音」+「倍音」のチューニングをしていきます。

倍音がよく分からない場合はこちら

倍音とは何か?倍音の意味を分かりやすく解説!

自然倍音列

C2(ド)に含まれる自然倍音列

例として「へ音記号の下のドが基音とした場合」を挙げましたが、1~16の各倍音の音程関係は「レ」でも「オクターブ上のソ#」でも同じように維持されます。

D2(レ)の自然倍音列

普段耳にする楽器の音は、この倍音が同時に鳴っています。

小さめの音で倍音が混ざって鳴っていますが、基音が一番強く鳴っているので「ドの音だ!」と判別することができます。

(楽譜上の「1」は基音)

同時に鳴っている1~16どの倍音が強いか?弱いか?そのバランスによって、楽器の音色がある程度決まってきます。

チューニングする倍音の違い

シロフォンとマリンバでは作る時にチューニングする倍音が全く違います。

出典:YAMAHA楽器解体全書
基本のチューニング音色
シロフォン基音と第3倍音他の楽器より目立つ
マリンバ基音と第4倍音と第10倍音他の楽器になじみやすい

その結果、同じ木琴ながら違った音色になっています。

また、同じ楽器でも音域によって合わせる倍音が変わってきます。

シロフォンのチューニング

シロフォンのチューニング

シロフォンは3倍音が基本で、低音域では7倍音も調律されることがあります。

管楽器や弦楽器にはこの第3倍音(オクターブと完全五度)が強い、という楽器はありません。

合奏の中で際立つシロフォンのキャラの濃さはこの倍音成分のせいです。

マリンバのチューニング

マリンバのチューニング

マリンバの音板は4倍音にチューニングされて、低音部では10倍音も調律されます。

マリンバ独得の心地よい低音の響きはこのチューニングから生まれています!

管楽器や弦楽器に比較的近い倍音構成なので、マリンバは他の楽器になじみやすく、時には埋もれやすい特徴があります。

歴史が違う

マリンバとシロフォン。

現在は似たような形をしていますが、100年前は全く違う姿でした!

シロフォン

出典:http://temposenzatempo.blogspot.com/2017/10/xylophon-kinder-part-2.html

現在のシロフォンの前身はストロー・フィドルというヨーロッパの民族楽器でした。

縦4列に鍵盤が並べられた楽器で、共鳴管はついていませんでした。

シロフォンが現在の形になったのは約100年前です。

オーケストラの作品に登場したことがきっかけで、演奏しやすいようにピアノと同じ並びに、共鳴管を付けて大きな音も出せるように改良されていきました。

詳しくはこちらの記事で!

シロフォンの起源については諸説あり、アジアに起源があるのではないか?ともいわれています。

アジアには箱型の共鳴管を持つ木琴が多く存在しています。

マリンバ

グアテマラのマリンバたち
グアテマラのマリンバ

マリンバはアフリカ起源といわれており、19世紀後半にはメキシコ・中南米の民族楽器として広く親しまれていました。

(グアテマラでは一家に一台ピアノ、の感覚で一家に一台マリンバがあるそうです)

写真からも分かるように、この当時はピアノと同じ並び方ではありません。

シロフォンと同じく約100年前、そのマリンバをアメリカのディーガン社がピアノと同じ並びにして金属製の共鳴管にするなど改良し、現在のような見た目になりました。

詳しくはこちらの記事で!

MEMO
現在の姿に落ち着くまでにシロフォンとマリンバは全く別の道を通ってきました。
ただし、シロフォンもマリンバも前身となった楽器は長い歴史の中で世界中に伝わったり変化したりして、途中で混ざったり廃れてしまったりを繰り返していたのかもしれません。
起源が違うのか同じなのか?打楽器自体は歴史が非常に長く、さかのぼれば古すぎるので資料も無く、明確な答えは出すことができません

まとめ

シロフォンマリンバ
チューニング基音と第3倍音(と第7倍音)基音と第4倍音と第10倍音
音色目立つなじみやすい
共鳴器箱型・無しひょうたんなど
起源アジア?アフリカ?
発展ヨーロッパ→アメリカ中南米→アメリカ
記譜と実音実音は1オクターブ上実音は記譜通り

シロフォンとマリンバの決定的な違い
  1. チューニングが違う(音色が違う)
  2. 歴史が違う

表にもあるように、シロフォンの実音は1オクターブ上です。
(楽譜に書いてある音より1オクターブ高い音が鳴る)

シロフォンが用意できないときにマリンバで演奏する場合は楽譜の1オクターブ上で弾き、

シロフォンでマリンバの代用をする場合は1オクターブ下で弾きましょう!

それでは、また!

参考URL・書籍

YAMAHA楽器解体全書 マリンバの成り立ち

ウィキペディア:マリンバ

Wikipedia:Marimba

Britannica musical instrument Xylophone

マリンバ・木琴とは

MAKING MARIMBAS and Other Bar Percussion Instruments(Bart Hopkin,Carl Dean共著 Experimental Musical Instruments社)