こんにちは!
部活動指導員として公立中学校の吹奏楽部に携わっています吉岡です。
今回は文化庁の「地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究」から、地域移行のモデルケース10種を取り上げて解説していきます。
既に実施している団体がどのように活動を進めているのか調べられる資料も案内していますので、気になる方はご覧になってみてください。
ポイント
学校から完全に切り離して外部で活動することを「部活動の地域移行」としているわけではなく、活動場所は学校のまま地域の人材を活用したり、他校と合同で部活動をする場合も地域移行として含まれています。段階的に地域移行を行う場合にも活用しやすい一覧となっています。
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地域移行の「きっかけ」による分類
文化庁が行った団体プレヒアリングや教育委員会・自治体アンケート、文化部の地域移行事例の収集・ヒアリングにより集められたデータを元に10種のモデルが発表されました。
すでに実施されているものや構想中の事例も含まれています。
また、今回の調査研究報告書には「地域文化倶楽部(仮称)」という新しい言葉も出てきました。
まずは10種のモデルケースが属する地域移行の「きっかけ」を切り口にした3つを挙げていきます。
地域文化倶楽部とは?
学校の文化活動が地域移行され、子どもたちが地域の人々ともに、生涯を通じて文化活動に参加し、親しめる環境。
もともと地域で行われてきた文化活動等が、広く地域の人々に親しまれるようになることで、地域文化倶楽部となり得るともされる。
現状をなんとかしたくてNPO作っちゃいました
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課題解決型
指導できる教員がいない・部員数が少ないなど、学校が抱える課題を切り口にしたモデル。
主に運営主体は学校のまま、学校を活動場所として外部人材を活用するため、現行の部活動から移行しやすいモデルです。休日のみ外部指導になる場合も含まれます。
(一部学校と連携して外部施設を利用するケースもあり)
吹奏楽部としては現行の部活動指導員や外部講師による学校での指導、合同バンドといったところです。
部活動指導員活用、民間の外部講師、合同部活動、保護者と地域による支援モデルなど
ニーズ充足型
より専門的な指導を受けたい・様々な文化活動に触れたいといった子どものニーズを切り口にしたモデル。
活動場所は主に学校が想定されているが、運営は文化施設・芸術大学・文化団体などといった文化資源を活用します。
吹奏楽部としては運営が芸術系大学・文化施設・文化団体となって、学校または文化団体の拠点で活動する形になるでしょうか。
大学アウトリーチモデル、文化施設アウトリーチモデル、文化団体アウトリーチ等モデル
地域文化倶楽部による地域移行型
子供が生涯を通じて文化に親しむモデルであり、課題解決型・ニーズ充足型に比べるとより学校から独立した形態と言えます。
運営は文化施設や民間事業者、地域の団体であり、活動場所も文化施設など主に学外が想定されています。
吹奏楽部としてはジュニアオーケストラなど地域の学生楽団になるかと思います。
文化施設プログラムモデル、民間事業者モデル、保護者・地域による支援モデル
以下でさらに細かい分類について紹介していきます。
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課題解決型
すでに多く実施されているモデルであり、完全な地域移行への段階的措置にもなると思います。
部活動指導員活用モデル
学校内で従来教が担っていた管理監督等 部活動指導員制度を用し、学校内で従来教が担っていた管理監督等 の業務を部活動指導員に委ね、学校部活動を支援する。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
※休日の地域移行を行う部活動も含む。
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:矢野ジュニアマーチングバンド
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 28ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
民間の外部講師モデル
技術面で追加的な指導を受けたい学校が、活動きるスキル持つ講 師を外部から招致して学校の部活動指導を依頼する。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:東京藝術大学連携事業・音楽教育支援事業
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 16ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
合同部活動モデル
複数の学校(異なる種間連携含む)が合同で部活動を実施する、大会等に参加する。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:品川区教育委員会
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 14ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
保護者、市域による支援モデル
保護者やボランティア等が部活動中の見守りや大会時の送迎を行うことで部活動を支援する。地域の人々が学校と連携して団体等を創設し部活動に代替する活動を作り上げる。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:茎崎地区文化・スポーツクラブ、地域部活・掛川未来創造部 Palette
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 10 ページ目・22ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
ニーズ充足型
学校施設の活用がメインでありながら、従来の部活動からは少し変化した文化的専門性の高い内容が期待されているようです。
大学アウトリーチモデル
大学が教員等を校に派遣し、学校部活動又は学校を活動場所とする文化活動を指導・支援する。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:東京藝術大学連携事業・音楽 教育 支援事業 支援事業 、東京藝術大学×世界遺産ミュージックキャンプの島づくり島づくりプロジェクト
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 16ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
文化施設アウトリーチモデル
文化施設が、当該保有する又はネットワークを芸術団体や芸術家を学校に派遣し、学校を活動場所とする文化活動を支援する。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:福井県立音楽堂 ハーモニホルふくい
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 20ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
文化団体アウトリーチ等モデル
文化活動を事業目的として活動している団体(営利性を伴う団体含む)が専門人材を派遣し、文化活動を指導・支援する。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:キッズ伝統芸能体験 、開成ジュニアアンサブル「 Blue Birds」、姫路市ジ ュニアオーケストラ
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 12ページ目・18ページ目・26ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
地域文化倶楽部による地域移行型
部活動に代替する学外の活動と考えられます。
文化施設プログラムモデル
文化施設が、その施設設備、人材、コンテンツを活用し、文化施設内で子供向けのプログラムを提供する。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:下北Jr.ウインドオーケストラ、福井県立音楽堂 ハーモニーホールふくい
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 8 ページ目・20ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
民間事業者モデル
文化事業を行う民間事業者等が、その事業の一つとして地域での文化活動を主催する。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:キッズ伝統芸能、名古屋市教育委員会
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 12 ページ目・24 ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
保護者・地域による支援モデル
地域の人材・団体(NPO法人等の法人格を有した団体含む)が、地域での文化に親しむための受け皿となり、子どもの文化活動を主催する。
地域文化倶楽部(仮称)の創設に向けた調査研究
報告書概要版
すでに実施している取り組み例:地域部活・掛川未来創造部 Palette
地域文化倶楽部(仮称)の 創設に向けた調査研究事例集 22ページ目にて活動費用や活動内容、体制などがまとめられています。
部活動に代替する活動が求められる
報告書にもまとめられていますが、部活動の地域移行は「部活動の利点」をなるべく残して検討する必要があると思います。
部活動の利点として、
・通いやすいこと
・子供たちの金銭的負担が少ないこと
・継続的な活動であること
・同世代と課題を解決していく成長の場であること
などが挙げられます。
金銭的負担については「本来必要な金額を払うべき」など様々な意見が出ていますが、多くの学校部活動では'貧富の差を問わず「やりたいことに挑戦できる場」であることは確かです。
習い事とはまた異なる、仲間と一緒に主体的に活動していく居場所ですね。
金銭的負担が障壁にならないように工夫することが何より大切な課題だと感じています。
まとめ
モデルケースが発表されたことで、吹奏楽部の地域移行も少しずつ具体的に感じられるようになってきました。
都心部や地方都市、へき地など地域によって実情も大きく異なることから、その地域に合わせたきめ細やかなコーディネートが必要になってくるものと思います、
ということで筆者も現在、吹奏楽部の地域移行に対応するNPO法人設立に向けて準備を進めております。
部活動の地域移行の理由として教員の負担軽減が挙げられていますが、教員が本来の業務に集中できるまたは自身の家庭のために時間を使えるようになることで、結果的に子どもたちの健やかな成長、豊かな心を育むことに寄与していくと思います。
一気に全てのことを解決することは出来ませんが、少しずつでも段階的に進めていくことができればと思います。
それでは、また!