こんにちは!部活動指導員の吉岡です。
「もっとはっきり大きく」
「もっと素早く」
よく部活動で耳にするあいさつ・返事への指導。
あいさつと返事は「相手に伝える」ことが本来の目的です。
あいさつと返事を大切にする理由は、
「全国レベルの学校がやっているから」
「社会に出てから役に立つから」
というよりも、相互のコミュニケーションによって育まれる「信頼関係」にあると思います。
今回は吹奏楽部のあいさつ・返事について、自分なりの考えを書いていきます。
大きければ大きいほど良い?
全国レベルの吹奏楽部というと、あいさつや返事が大きく、素早く、揃っているイメージがあると思います。
確かにカッコよくて、自信があって、強そう(!?)に見えます。
でも、本来あいさつと返事は相手に「伝わる」ことが一番重要で、大きければ大きいほど早ければ早いほど良いというわけではありません。
目の前にいるのに大音量で返事されても、びっくりしますよね。
手段の目的化になっている!?
先日、帰りのミーティングで副部長が「あいさつと返事」について話していました。
部則で決まってるからとりあえずやる、
あいさつと返事はハッキリ大きく!
を意識しすぎるあまり目的を忘れていないか?
「相手に伝わるあいさつ・返事」をしよう、との内容でした。
ビジネス用語でよく使われる「手段の目的化」に当てはめれば、
相手に伝える【=本来の目的】ための
あいさつ・返事【=手段】が
とにかくハッキリ大きく返事をする【=目的】
になっていないかな?
ということです。
副部長は解決策として、
「目を見て、気持ちを持ってあいさつ・返事をしよう」と呼び掛けていました。
あいさつと返事は信頼
部活全体、全員と仲良くなる必要はないと思います。
そもそも全員同じように仲良くする、というのは無理があります。
ただし「信頼関係」はお互いに築こうと思えば、誰とでも築けると思います。
相手の為にも自分自身の為にも、集団で活動するうえで「信頼関係」だけは大切にしてほしいと願っています。
相手を意識したコミュニケーションが日々積み重なって、お互いの信頼につながっていくのだと思います。
合奏は信頼でできている
そもそも、吹奏楽部の合奏というのは信頼の上になりたっています。
指揮者の振り方がとても不安定。
メロディが途切れてしまう。
伴奏が入ったり入らなかったりする。
昨日決めたことが守られていない。
信頼が無ければ、合奏どころではありません。
口より行動で
- はっきりした声でスラスラ話せるけど、時間や約束を守ろうとしない人
- 口数は少ないけど、時間や約束をしっかり守る人
自分の大事なものを預けたり、大切なことをお願いするとき、どちらの人が信頼できるでしょうか。
吹奏楽部では、部員全員の財産である楽器など「学校の備品」や「練習場所」それから「活動時間」を共有しています。
お互いの信頼が低いと居心地が悪く、充実した活動はできません。
声が上手く使えなければ行動で
私は声は小さくてもいい、とにかく相手に伝えようとしているかどうかが大切だと思っています。
(たしかに、声は大きいほうが伝わりやすいです。)
たとえば、これまで場面緘黙症(説明すると長くなるので「究極のシャイ」と考えてみてください)の生徒を今まで何人かみてきました。
個人差はありますが、彼らは声を発することが容易ではありません。
(声を出したくても出せない)
にもかかわらず、
不思議と彼らは周りから信頼されている上に、しゃべれない分を周りの人がサポートしてくれるケースが多いです。
なぜかというと、声は出せなくても本人の行動によって、周りとの信頼関係を作れているからです。
相手に伝えるための手段は声だけではありません。
思い返せば、彼らと声での会話は一度もしたことが無いのですが、ジェスチャーや表情で充分伝わってきています。
行動を見ているだけで、部活が、音楽が大好きなのだと伝わってきます。
また場面緘黙症に限らず、複雑な心境だったり、色々抱えていて声を上手く出せない時もあると思います。
声が上手く使えないなら、うなづく、目を見るなど、今できる何かしらの手段を使って本人なりの意思表示ができれば良いと思っています。
ひとつの価値観にとらわれない
あいさつや返事は大きくてハッキリしている方がいい!
確かに分かりやすい基準だと思います。
そうではあるけど、表面的な部分だけではなく「伝えようとしているか」本質的な部分を意識する必要があると思います。
ひとつの方法や価値観にとらわれることなく、
伝えようとする送信能力・受け取ろうとする受信能力、双方の質を高め広げていくことが大切です。
誰かの価値観や誰かの評価だけでなく、自分の感覚を大切にしてほしいと思います。
おわりに
「何を言うか」よりも「どう行動するか」を人は見て、感じています。
あいさつや返事も大きくハッキリ!なだけではなく、相手に伝えようとしているかが重要です。
声の大きさなど表面的な部分だけで判断しない。
これは個々の多様性を認めることに繋がり、お互いの信頼関係が育っていくのではないかと思います。
結果的に、部活動がみんなにとって安心して過ごせる居場所になっていくと思います。
まさに音楽や芸術こそ多様性であり、正解がない世界です。
ひとりひとりの日々のちょっとした心がけで、みんなにとって充実した活動を、安心できる居場所を作っていきたいですね。
それでは、また!
参考文献
・場面緘黙時の心理と指導ー担任と父母の協力のためにー(河井芳文・河井英子/共著 田研出版株式会社)
・場面緘黙児への支援ー学校で話せない子を助けるためにー(Angela E.McHolm・Charles E.Cunningham・Melanie K.Vanier/共著 河井英子・吉原桂子/共訳 田研出版株式会社)
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