こんにちは!打楽器の吉岡です。
今回は2022年度吹奏楽コンクール課題曲I「やまがたふぁんたじぃ~吹奏楽のための~」について演奏のポイントをまとめていきます。
具体的な奏法よりも楽譜の読み取り方に重点を置いて書いていきます!
曲全体
この曲では打楽器が得意とするダイナミックな表現はもちろんのこと、場面によってはどこまで無駄なくコンパクトに演奏できるか?がカギになります。
トゥッティでのp(ピアノ)や、少人数でのf(フォルテ)など、様々な場面が出てきます。
同じ強弱記号であっても、どの楽器と一緒に演奏しているか?どのぐらい管楽器に溶け込ませるか?あるいは打楽器らしさを出すか?で表現が大きく変わってきます。
曲目解説にもあるように、音量だけではなく音色にもこだわって演奏していきましょう!
また、打楽器も「息」を使って鳴らすイメージを持って、管楽器と一体感のある演奏を目指していきましょう!
ティンパニ
フレーズや場面の出だし/終わりを引き締める役割をもっています。
オーケストラではティンパニが「第2の指揮者」と言われるほど、強い支配力を持っています。
場面の区切りの前後でティンパニが入ることで、合奏全体が「シまる」んですね。
引き締め役としての自覚を持つ&バンド全体を下から支えるように演奏していきましょう!
10小節目
ドラと一緒に入ります。
この部分は曲調が変わる手前で締めくくりの音なので、メゾピアノですが存在感を出していきましょう!
11~
チューバなど低音パートの一部分だけを抜き出して演奏しています。
低音のパートを歌いながら自分のパートをたたいていくと、よく馴染んで低音パートをしっかり支えることができます!
ティンパニは出せる音が限られているので、このような部分が何度も出てきます。
自分のパートだけでなく、低音パートの動きを把握して一体感を持って演奏していきましょう!
スタッカートは短ければ短いほどイイ、とにかく早く音を止めればイイわけではありません。
響きを殺すことなく、すっきりコンパクトに音をまとめるように演奏すると、管楽器のスタッカートに近づけられると思います。
35~
36小節目のソロは37小節目から始まる音楽との橋渡し役です。(そのため、ソロの音量はフォルティッシモではなくフォルテになっています)
直前のトゥッティの「圧」を受け止めるとともに、次へつながるように演奏していきましょう!
ロール=「連打」ではなく、「音を伸ばす」ことも忘れずに!
楽器は違えどロールの基本は同じ!
41~
ティンパニは音が伸びるので、休符があるときは可能な限り音を止めましょう。
(マフリングといいます)
休符も演奏するようなイメージで、止めるタイミングも拍に合わせられると良いと思います。
104~
ロールのクレッシェンドは単純に「強くしていく!」だけではなく、「近づいてくる」「広げていく」「深くしていく」「ふくらませていく」などのイメージも持つことも出来ます。場面によって様々なイメージを描いてみてください。
120小節目の頭は93小節目から蓄積され続けたエネルギーが打楽器チームの1発で一気に解放されるとともに、直後の強烈なユニゾンを導き出す重要な「点」になります。
特別な一発を鳴らして、バンド全体を引き締めましょう!
120~
120小節の後打楽器が完全になくなるのも、かっこいいポイントです。
音のリリースを意識して音を止めましょう!
126小節目からのフォルテッシモは128小節目から始まる少人数アンサンブルに繋がるように、計画的にデクレッシェンドしていきましょう。
174~
出ました!引き締め役!
167小節目から低音パートと一緒に演奏しているつもりで一体感を持って演奏していきましょう!
183~
また出ました!引き締め役!
休みの間に他の楽器がやってきたクレッシェンドを受け取って、183小節目から合流しましょう!
ラストの部分はアクセントたくさん出てきます。
単純に「強く」たたくだけではなく、「深く」「スピードを付けて」「硬く」などのイメージを使うことも出来ます。低音楽器と一緒に歌う感覚で、最後の音まで演奏していきましょう!
音のスピード・深さって何?太鼓を押して感覚をつかもう!【初心者おすすめ】
195~
195小節目頭はバスドラムとティンパニのソロです。
196小節目から1小節ごとにシンバル、ティンパニ、スネアの順番で入っていくので、楽器の大きさは違っても熱量でソロらしくキメていきましょう!
Perc.1
1~10小節 スレイベル
フルートが伸ばしているタイミングでスレイベルが入っています。
フルートのソロを一緒に歌いながら一体感を持って、合いの手のように入れていきましょう!
楽譜上はずっとメゾフォルテですが、管楽器が吹いているフレーズの中には頂点や引き際があります。
管楽器の歌い方を感じながら、一音一音こだわっていきましょう!
27小節~スネアドラム
管楽器と「馴染ませる」部分と、打楽器らしく「目立つ」部分のメリハリをつけていきましょう!
音程がないスネアですが、自分も管楽器のハーモニーに参加しているつもりで演奏していきましょう!
35小節~スネアドラム
メロディと同じ動きをしています。
強弱がダイナミックについていますが、あくまでメインの管楽器を引き立てる存在です。管楽器のパートを歌いながら練習していきましょう!
37~38小節目と、39小節目、40小節目、41小節目は一緒に動く楽器が目まぐるしく変わっていき、役割も変化していきます。
引き締め役であることに変わりはありませんが、メリハリを持って叩き分けていきましょう!
スティック選びにもこだわりを!
41~スネアドラム
アルトサックス・トランペット・ホルンおよび打楽器で一緒に動いています。
まずは打楽器パートでまとまって聞こえるように、各楽器の音量バランスや叩き方にこだわってみてください。
64~スネアドラム
同じく八分音符で刻んでいるクラリネットにはスタッカートがついています。
スネアもスタッカートに聞こえるように、音をコンパクトにまとめていきましょう!
78以降強弱記号は「ピアノ」ですが、「弱く」ではなく「静かに」のイメージが良さそうです。
メロディが安心して演奏できるように、静かな音でも管楽器みんなを乗せて運んでいく意識で演奏していきましょう!
存在感のあるピアノとは?
93~スネアドラム
120小節目の頭は93小節目から蓄積され続けたエネルギーが打楽器チームの1発で一気に解放されるとともに、直後の強烈なユニゾンを導き出す重要な「点」になります。
リムショットは特別な一発を鳴らして、バンド全体を引き締めましょう!
123~スネアドラム
120小節の後打楽器が完全になくなるのも、かっこいいポイントです。
123小節目の急激なクレッシェンドをキメて、124小節目から堂々と管楽器に合流できると素敵です。
ロールのクレッシェンドは単純に「強くしていく!」だけではなく、「近づいてくる」「広げていく」「深くしていく」「ふくらませていく」などのイメージも持つことも出来ます。場面によって様々なイメージを描いてみてください。
かっこいいクレッシェンドのコツとは?
126小節目からは、128小節目頭のトライアングルに受け渡すつもりで計画的にデクレッシェンドしていきましょう。
128~スレイベル
フルート・オーボエの入りを印象付けるように、振り方や音色にこだわっていきましょう!
167~スネアドラム
スネアはタッタカで刻んでいますが、全体としては長めの音価で比較的ゆったりと動いています。
フレーズを大きくとるようにして、幅の広い、横の流れを意識しながら刻んでいきましょう!
183~スネアドラム
189小節目からスネア→ティンパニとアクセントが半拍ずつズレて動いています。
拍子と合わないアクセント(ヘミオラ)は強力な推進力や緊張感を作り出します。
曲のラストにふさわしい盛り上がり!「これはオイシイ!」と感じながら演奏したいですね…!
Perc.2
10小節目 タムタム/銅鑼
ティンパニと一緒に入ります。
この部分は曲調が変わる手前で締めくくりの音なので、メゾピアノですが存在感が必要です。
アタックがぼやけて気になる場合は、あらかじめ少し振動させておく(聞こえないぐらい弱い音でたたいておく)と、音の立ち上がりが早くなります。
「あらかじめ少し振動させておく」詳しくはこちらの記事で
35~合わせシンバル
アクセントは「強く」ではなく、「濃く」「深く」とイメージしたほうが良さそうです。
スネア・バスドラムに比べるとシンバルは出番が少ないですが、音楽を華やかに盛り上げる役割をもっています。
常に管楽器のハーモニーに参加するつもりで演奏していきましょう!
45小節目のシンバルソロは、直前のトゥッティの「圧」を受け止めるとともに、直後の強烈なユニゾンを導き出す重要な「点」です。
特別な一発を鳴らして、バンド全体を引き締めましょう!
合わせシンバル、いい音を出すには?
合わせシンバル(クラッシュシンバル)をイイ音で鳴らすための基本3つ
104~サスペンデッドシンバル
サスペンデッドシンバルのクレッシェンドは音楽を盛り上げると共に、次の場面へ繋げる役割を持っています。
クレッシェンドの終わりの音(目的地)がどんな音楽になっているか?
どんなハーモニーが鳴っているか?
意識して演奏していきましょう!
148~タンバリン
一緒に動いているクラリネットやサックスにはスタッカートがついています。
まとまったコンパクトな音で演奏していきましょう!
183~合わせシンバル
バスドラムとの一体感を持ちつつ、シンバルらしいゴージャス感を出していきましょう!
シンバルにとっては同じ音価の5発でも、バンド全体としては毎回和音や動きが変化しています。
一音一音の和音の変化を感じながら鳴らしてみてください。
Perc.3
イントロ
マラカスのロールはミュートをしたトランペットと息を合わせます。
マラカスの玉の部分を下にしてロールしても、上にロールしても大丈夫です。
1本でもロールできますし、2本使ってロールもできます。もしクレッシェンドするのに音量が足りなければ、途中から2本使ってロールする方法もあります。
マラカスの大きさや種類によって変わってくるので、表情を付けやすいやり方を探してみてください。
35~バスドラム
低音パートと意気投合しましょう!
ティンパニとの一体感も大切です。
アクセントは単に「強く」ではなく、「濃く」「深く」とイメージしたほうが良さそうです。
打面だけではなく裏側の皮も振動することを意識して、低く頼もしい音で演奏していきましょう!
四分音符は四分音符だけど…?
バスドラムもメロディの一員になって、ひとつひとつの音に音程があるイメージでたたいていきましょう!
アクセントの付いた音には「スピード感」が求められることがあります。
コツをつかむには色々な方法がありますが、音のスピード感は打面を手で押して空気穴から出てくる風を速くする練習がおススメです。↓
音のスピード・深さって何?太鼓を押して感覚をつかもう!【初心者おすすめ】
120 バスドラム
長い長いクレッシェンドの頂点で、やっとバスドラムが入ります。
93小節目から蓄積され続けたエネルギーが120小節目の頭の打楽器チームの1発で一気に解放されるとともに、直後の強烈なユニゾンを導き出す重要な「点」になります。
特別な一発を鳴らして、バンド全体を引き締めましょう!
128~トライアングル
トランペットやトロンボーンが作り出すデリケートなハーモニーを感じながら、印象的に鳴らせると良いと思います。
127小節目のクラリネット・アルトサックスの十六分音符から受け取るようにして入ると自然につながります。
167~バスドラム
こちらも120小節目と同じく、頂点だけにバスドラムが入っているパターン。
ただし、前と違ってより伸ばしになっていたり、全体として広がりのある音楽が始まります。
直前のクレッシェンドを受け取ると共に、バンド全体を下から支えるようなを
この記号にもこだわっていこう!
183~バスドラム
最初は八分音符で書かれていますが、3発目からは二分音符になります。
低音楽器が息を使って音を伸ばすように、バスドラムも音を伸ばしているように演奏してみてください。
また、1発ごとにバンド全体の和音も変化しています。一音一音の和音の変化を感じながら鳴らしてみてください。
太鼓で二分音符…?
Perc.4 グロッケン&シロフォン
イントロ
打つスピードや弾き方を使い分けて、スタッカートやテヌート、スラーなどのアーティキュレーションを繊細に表現していきましょう。
また、この部分ではフルートが伸ばしているタイミングでグロッケンが入っています。フルートのソロを一緒に歌いながら一体感を持って、合いの手のように入れていきましょう!
打楽器のアーティキュレーション
楽譜上はずっとメゾフォルテですが、管楽器が吹いているフレーズの中には頂点や引き際があります。
フルートの動きと合わせて見てみると、1小節目はフレーズの始まりで頂点に向かっていきます。4小節目はフレーズの終わりでデクレッシェンドがかかっています。
見た目は同じ音符でも、置かれた状況が変われば出てくる音も変わってきます。
管楽器の歌い方を感じながら、一音一音こだわっていきましょう!
打楽器は叩けば音が出ますが、1音1音を歌うことが音楽的な演奏に繋がっていきます。
鍵盤打楽器も1音1音を歌うつもりで弾いていきましょう!
鍵盤打楽器で歌う…?
11小節~グロッケン
スコアを見てみると、木管楽器の一部分を抜き出してグロッケンが演奏しています。
これはグロッケンは音が伸び続ける楽器なので、あえて音数を減らしてあるのだと思われます。
同じ動きをしているパートを歌いながら弾いていくと、一体感を持って演奏することができます。
鍵盤打楽器にはこういった部分が何度も出てきます。
自分のパートだけでなく、管楽器の動きを把握して一体感を持って演奏していきましょう!
2本マレットの持ち方2種類を試してみよう!
35~
管楽器がスラーを演奏するときは、スラーの出だしでタンギングして、そのあとに続く音は息を流したまま指だけで音を変えています。
その感覚を持って演奏すると、管楽器とより一体感を持って演奏できるようになります。
41~シロフォン
木管楽器の補助のような役割を持っています。動きは異なりますが、たたき方や使うマレットを工夫して馴染ませていきましょう。
途中からの3和音は3本マレットで演奏することも可能ですが、2度(ド・レ)が取りにくい場合は4本持って演奏しても良さそうです。
104~シロフォン
スタッカートは「短く切る」ほか、「粒を揃える」と考えることも出来ます。
ピアノであっても、同じ動きをしているトランペットの輪郭をハッキリさせるイメージで演奏していきましょう!
128~グロッケン
トランペットやトロンボーンの動きと同じかと思いきや、グロッケンのスラーは半拍ずらしてあります。
同じ金属楽器であるトライアングルとの音色やバランスも意識しながら、それまでと異なる幻想的な雰囲気を出したいですね。
151~グロッケン
物理的な音量ではなく、曲の雰囲気や音色としての「ピアノ」を意識して演奏していきましょう!
アクセントが付いたピアノ、どうする?参考はこちら
183~
35小節目からと同じく、同じ動きをしている管楽器がどんな息の使い方で吹いているか?が参考になります。
同じ動きをしているフルート・クラリネットの音色を縁取るつもりで演奏していきましょう!
終わりに
以上、2022年度課題曲I「やまがたふぁんたじぃ~吹奏楽のための~」の打楽器演奏のポイントでした!
スコアを読み込むことで、
「どう演奏したらいいか?」
「この音にはどんな役割があるのか?」
知ることができます。
スコアや楽譜の読み解き方はこちらの記事を参考にしてみてください。
打楽器の出番少ない!つまらない!いやスコアを読めばきっと面白くなる!
また、「打楽器の音が大きすぎる!小さくしろ!」「管楽器と混ざらない!」問題については以下の記事を参考にしてみてください。
打楽器うるさい問題、弱くたたくだけでは解決しない!?~管楽器とブレンドする方法
それでは、また!