もくじ
曲全体
精巧に構成された作品で、打楽器も管楽器と切っても切れない重要な役割をもっています。
音程を出さない打楽器であっても、カデンツ(終止形)であったり調性が揺れる部分であったり全体のハーモニー(和声)がどのように変化しているか、繊細に感じ取りながら演奏する必要があります。
テンポキープや強弱をつける技術面だけではなく、ひとりひとりの「耳」「センス」が大きく試される作品と言えるでしょう。
打楽器と管楽器が分離した演奏にならないように、打楽器も「息」を使って鳴らすイメージを持って演奏していきましょう!
また、この部分は打楽器らしさ20%、管楽器に溶け込んでる度80%など音や場面によって使い分けができると、より大きく表現の幅が広がると思います。
ティンパニ
スネアやバスドラムに比べるとティンパニは出番が少ないですが、フレーズや場面の最初と最後を引き締める役割をもっています。
楽譜を見てみると、リハーサルマークの前後やフレーズの終わり/始まり(4小節単位など)にティンパニが入っていることが多いはずです
オーケストラではティンパニが「第2の指揮者」と言われるほど、強い支配力を持っています。特に重要なハーモニーの動き(作品解説にもある「カデンツ」など)にティンパニが入ることで、合奏全体が「シまる」んですね。
「山に登りました。」という文章を読み上げる時に、最後の「た」を高く強く発音してしまうと、「山に登りました?」に聞こえてしまいますよね。
音楽も同じで、必ず区切りがつく部分があります。
部分によっては何通りかの区切り方ができたり、大きく区切るか小さく区切るか正解が1つではない箇所も出てくると思います。最後の音が始まりの音と重なっていたり、パートによって区切りの位置が少し異なる場合もあるでしょう。
バンド全体の流れを敏感に捉えながら、堂々と演奏していきましょう!
イントロ
低音パートや金管楽器の一部分だけを抜き出して演奏しています。
メロディや低音パートを歌いながら自分のパートをたたいていくと、よく馴染んで低音パートをしっかり支えることができます!
ティンパニは出せる音が限られているので、このような部分が何度も出てきます。
自分のパートだけでなく、低音パートの動きを把握して一体感を持って演奏していきましょう!
クレッシェンドは単純に「大きくしていく!」だけではなく、「広げていく」「深くしていく」「ふくらませていく」などのイメージを使い分けてみてください。
また、アクセントも「強く」だけではなく、「濃く」「深く」「広げる」などとも考えることができます。
自分が普段の会話で話すときに軽くアクセントをつけるようなイメージもいいですね。
場面によって使い分けてみてください。
A
ティンパニは音程がハッキリした楽器なので、たたいた後にそのままにしておくと合奏のハーモニーを濁らせてしまいます。
特にA1小節目は一打ごとに和音が変わっています。ティンパニのEs→Es→Bは3拍目のBをたたくと同時にEsを止めましょう。
1小節目1拍目と2拍目のEsや、2小節目のEsもティンパニは同じ音でも全体の和音は変わっているので、一打一打意識して演奏していきましょう!
休符も演奏するようなイメージで止めるタイミングも拍に合わせられると、安定した演奏になります。
ノリが悪い、テンポが良くない原因は「休符」にあった!?~休符も歌おう!
I
出ました!引き締め役!
他の楽器がやってきたクレッシェンドや高揚感を受け取って、ロールで入っていきましょう!
ロール=「連打」ではなく、「音を伸ばす」ことも忘れずに!
楽器は違えどロールの基本は同じ!
J
Aの部分と同じく、一打一打のハーモニーを感じながら演奏していきましょう!
作品解説にもあるとおり、アクセントの表現を考えていきましょう。
Jは4小節目頭まで木管・Tp・中音が各間を縫って様々な動きをしてきたのに対し、4小節目の2拍目の裏で全員集合します。この部分のアクセントは全員が集合する1つのフレーズの「シメ」とも考えられますね。
K
同じ動きの中低音楽器にはテヌートが書かれています。吹き方を観察してバランスをとってみましょう。
2種類のアクセントが出てきます。打楽器パート内のバランスも意識しながら、たたき分けていきましょう!
Perc.1 スネアドラム
スネアはテンポキープの役割を持ちながら、様々な役割を任されています。
時には低音楽器と一緒、時にはフルート・クラリネットと一緒に動いていたり。
ストロークの種類やスピードを使い分けて、スタッカートやテヌートなどのアーティキュレーションも繊細に表現していきましょう!
イントロ
クレッシェンドは単純に「大きくしていく!」だけではなく、「広げていく」「深くしていく」「ふくらませていく」などのイメージを使い分けてみてください。
3小節目は4小節目の頭のバスドラムとシンバルにつながるようクレッシェンドしていきましょう!
(4小節目頭がこの曲で初めて打楽器全員がそろう瞬間でもあります)
アクセントは「強く」だけではなく、「濃く」「深く」「圧力(重さ)をかける」などとも考えることができます。
自分が普段の会話で話すときに軽くアクセントをつけるようなイメージを持ってみてもいいですね。
場面場面に合った表現を考えていきましょう!
ロールしやすいスティックがある!?
A
あまり主張せず管楽器と「馴染ませる」部分と、打楽器らしく「目立つ」部分のメリハリをつけていきましょう!
5小節目終わりから6小節目にかけてスネアだけに強弱が付いています。
実は、この6小節目がハーモニー的にとてもデリケートな部分。
(3拍目頭でBとAがぶつかり、すぐ解決します。この一瞬がとても美しい!)
デリケートなものを運ぶとき、どうしますか?スネアで表現してみましょう!
B
スネアだけどもメロディの木管と一緒に音程を出すようなイメージでたたいてみると、一体感が生まれ軽快なリズムになってくると思います。
「山に登りました。」という文章を読み上げる時に、最後の「た」を高く強く発音してしまうと、「山に登りました?」に聞こえてしまいますよね。
メロディと同じイントネーションで演奏していきましょう!
例えば24小節目の十六分音符も、木管楽器と一緒にスケールで上っているイメージで演奏すると、より表情豊かなリズムに聞こえてきます。
C
アクセントは直訳すれば「強調する」ですが、強調する方法は音を大きくするだけではありません。
32小節目アクセントはDの盛り上がりに向けた「意思の強さ」や「広がり」といったところでしょうか。
自分のバンドに合ったイメージや表現を探してみてください。
D
ほとんどのパートが基本的に四分音符以上で動いています。そのなかスネアは「タッタカ」で刻んでいます。
バンド全体の広がりの中で、のびやかに刻んでいきましょう!
F
強弱記号ピアノは単に「弱く」ではなく「静かに」「影から」などイメージを持って表現していきましょう。
小さな音量でも推進力が必要です。
(ホルンや低音の動きも大きくシンコペーションになっていて、推進力があります。)
Cantabile con animaからも分かるように、歌うようでありながら生き生きととしたリズムを刻みたいですね。
メロディが安心して演奏できるように、静かな音でもバッチリ支えていきましょう!
存在感のあるピアノとは?
H
あれ?これ四分音符で書いてもいいんじゃないの?
という箇所が時々出てきますが、全て理由があって書き分けられています。
どちらの表記でもたたくタイミングは同じですが、意識するだけで演奏が大きく変わってきます。一か所一か所こだわっていきましょう!
打楽器の八分音符+八分休符と四分音符は同じなのか?
J
木管高音と一緒にスネアも音程を出すつもりで演奏していきましょう!
リズムが凹んだり流れがちな部分にアクセントが付いています。木管楽器のアーティキュレーションも意識しながら大切に演奏してみましょう。
K
2種類のアクセントが出てきます。打楽器パート内のバランスも意識しつつ、こだわってたたき分けていきましょう!
音程順に並べなくてOK!
打楽器についてもっと知りたい!チューニング&メンテナンス本おすすめ3冊
Perc.2 シンバル
シンバルとバスドラムは切っても切れない「ニコイチ」です。
基本的に音量はシンバル<バスドラムだとブレンドしやすいです。
バスドラムの低音に乗っかって、華やかに鳴らしていきましょう!
シンバルは音楽を華やかに盛り上げる役割をもっています。
他の言葉を使えば、シンバルが入るとゴージャスな、リッチな雰囲気になるんですね。
盛り上がる場面や特別な瞬間にしか入っていないので、シンバルの出番は少なめになっています。
合わせシンバル、いい音を出すには?
合わせシンバル(クラッシュシンバル)をイイ音で鳴らすための基本3つ
四分音符は四分音符だけど…?
イントロ
バスドラムと一体感を持ちながら、シンバルで音程を出すつもりで管楽器の明るいハーモニーに参加していきましょう!
シンバルとしての存在感を保ちつつ、管楽器と馴染む明るい音色がいいですね。
7小節目は1拍1拍ハーモニーが移り変わっていきます。
同じ四分音符でも、一打一打管楽器と一緒にハモるつもりで演奏していきましょう!
アクセントは単に「強く」ではなく、「深く」「色が濃い」「密度が濃い」「ピンと張っている」など様々なイメージを使い分けていきましょう!
A 合わせシンバル
7小節目と同じく、一打ごとにハーモニーが移り変わっていきます。
12小節目頭は裏拍から入るパートのために特別な1発を!
あれ?これ四分音符で書いてもいいんじゃないの?
という箇所が時々出てきますが、全て理由があって書き分けられています。
どちらの表記でもたたくタイミングは同じですが、意識するだけで演奏が大きく変わってきます。一か所一か所こだわっていきましょう!
打楽器の八分音符+八分休符と四分音符は同じなのか?
B トライアングル・サスペンデッドシンバル
管楽器の作り出すデリケートなハーモニーを感じながら、印象的に鳴らせるといいですね。
トライアングルも音程を出すつもりで、メロディを歌いながら練習してみましょう!
サッシンロールのコツ
I サスペンデッドシンバル
non atackなので60小節目頭の音でハッキリと打点を出さないようにします。
なぜ、わざわざこの部分はアタック無しなのか?他の箇所と比べてみると違いが見えてくると思います。(もちろんスコアをみてくださいね)
63小節目のlet vib.はレット ビブレイトlet vibrateで響かせたままにする意味です。
下図のタイみたいな記号は音を止めなくてOKの記号ですが、なぜ二分音符や全音符で書かないのか。
理由の一つとして「あくまで音価は四分音符として叩いてほしい」が考えられます。
(音価=音の長さ)
二分音符で書かれていたら、2拍分積極的に伸ばす。鳴らす。
このタイみたいな記号で書かれて休符が続いている場合は、あくまで四分音符の音価として叩いて、響きだけを残します。
積極的に2拍めまで伸ばさず、自然に余韻が残っているイメージで書かれている場合が多いです。
大きなホールで演奏したときのような響きを感じながら、演奏してみるといいかもしれません。
J 合わせシンバル
楽譜上はAとほぼ同様ですが、より華やかになっています。
A同様、一音一音の和音の変化を感じながら盛り上げていきましょう!
Perc.3 バスドラム
低音パートと意気投合しましょう!
また、バスドラムは低音楽器のなかでも最低音を担当するつもりで、バンド全体を支えていきましょう。
(低音のなかの低音だからこそ、スネアや鍵盤よりも出番が少なく、本当に必要な時にしか入っていません。)
それからシンバルとバスドラムは切っても切れない「ニコイチ」です。
芯のあるバスドラムの低音でシンバルの華やかさを支えていきましょう!
バスドラムの上にシンバルが乗っかるイメージで音量はシンバル<バスドラムだとブレンドしやすいです。
四分音符は四分音符だけど…?
イントロ
低音パートを歌いながら、バスドラムで音程を出すつもりで演奏してみると、低音楽器とよくブレンドします。
練習時にチューバの左側で一緒に演奏して、息の使い方やブレスを真似してみるのもオススメです。
7小節目は1拍1拍ハーモニーが移り変わっていきます。
同じ四分音符でも、一打一打管楽器と一緒にハモるつもりで演奏していきましょう!
アクセントは単に「強く」ではなく、「深く」「色が濃い」「密度が濃い」「ピンと張っている」など様々なイメージを使い分けていきましょう!
A バスドラム
7小節目と同じく、一打ごとにハーモニーが移り変わっていきます。
誰かについていくのではなく、シンバルや管楽器と一緒に一打一打で音楽を前へ進めていくつもりで演奏してみましょう!
12小節目は低音楽器の動きを感じながらアウフタクトの意識で演奏しましょう。
B ウインドチャイム・バスドラム
下記関連記事に詳しく書いてありますが、ヒモ部分をさわるようにしたり、トライアングルのビーターを使うことで音色に変化を付けることができます。
楽器の個体差によっても変わってくるので、バンド全体の雰囲気や楽器に合った鳴らし方を選んでみてください。
特殊な奏法や楽譜の表記について!ウインドチャイムのコツと小ネタ集
21小節目からは低音やトロンボーンとハーモニーを作るイメージで演奏してみましょう。
メゾピアノなのにアクセント?と思った人はこの記事↓をぜひ読んでみてください。
E
バスドラムは2小節間同じ音ですが、1小節ごとにハーモニーは動いています。
42小節目の頭は、41小節目のシンバル(メロディの頂点)→ティンパニ・低音楽器のアクセント→バスドラムの二分音符(管楽器はキメの八分音符)と繋がっていきます。
Fからの音楽につながるようなフォルテで演奏していきましょう!
J
A同様ずっとリズムは同じですが、バスドラムもハーモニーの変化を感じながら演奏していきましょう!
遅れて聞こえる時は…
アクセントは単純に「強く」たたくだけではなく、低音楽器と一緒に歌う感覚で、最後の音まで演奏していきましょう!
音程順に並べなくてOK!
打楽器についてもっと知りたい!チューニング&メンテナンス本おすすめ3冊
Perc.4 グロッケン
フルートやクラリネットと同じ動きをしていることが多いです。
打つスピードや弾き方を使い分けて、スタッカートやテヌート、スラーなどのアーティキュレーションを繊細に表現していきましょう!
打楽器は叩けば音が出ますが、1音1音の音の高さを歌うことが音楽的な演奏に繋がっていきます。
鍵盤打楽器も1音1音を歌うつもりで弾いていきましょう!
鍵盤打楽器で歌う…?
イントロ
4小節目4拍目ではグロッケンは四分音符ですが、管楽器は細かいリズムで演奏しています。
グロッケンは音が伸び続ける楽器なので、あえて音数を減らしてあることがよくあります。
同じ動きの管楽器がどのように動いているか意識して、一体感を持って演奏していきましょう!
2本マレットの持ち方2種類を試してみよう!
A~C
この部分をはじめ全体に言えることですが、同じ動きをしているフルートやクラリネットのスラーやアーティキュレーションをチェックしておきましょう!
特にCの部分ではフレーズ内の細かい区切りやイントネーションが分かるようになります。
スラーで吹く時、管楽器は息を流しっぱなしにして指だけで音を変えています。
グロッケンで表現するにはどうしたら良いでしょう?ぜひ色々試してみてください。
楽器の高さは大丈夫?
【小中学生】楽器が高すぎる・低すぎる時の解決方法~高さが変われば演奏も変わる!
D
Aと同じかな?と思いきや、少しずつ違います。
他パートの流れも感じつつより華やかに演奏していきましょう!
F~ラスト
通常でもスラーでも打楽器は一打一打たたくことになりますが、管楽器のように「区切らず一息で吹く」イメージを持ってスラーを表現していきましょう!
グロッケンでスラー!?スタッカートって!?
終わりに
以上、2022年度課題曲3「ジェネシス」打楽器演奏のポイントでした!
スコアを読み込むことで、
「どう演奏したらいいか?」
「この音にはどんな役割があるのか?」
知ることができます。
スコアや楽譜の読み解き方はこちらの記事を参考にしてみてください。
打楽器の出番少ない!つまらない!いやスコアを読めばきっと面白くなる!
また、「打楽器の音が大きすぎる!小さくしろ!」「管楽器と混ざらない!」問題については以下の記事を参考にしてみてください。
打楽器うるさい問題、弱くたたくだけでは解決しない!?~管楽器とブレンドする方法
音程順に並べなくてOK!
作曲家の伊藤康英先生が分かりやすく解説されている動画もオススメです↓
それでは、また!